JIS Q 27001とは
JIS Q 27001は、日本産業規格(JIS)が定めた「情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)」に関する規格です。
国際規格である ISO/IEC 27001 をベースに、日本の法律や社会的背景に合わせて調整されたものです。
簡単に言うと、ISO27001の日本版であり、日本企業が情報セキュリティを管理するための「ルールブック」といえます。
ISO27001との違い
• 共通点
◦ 基本的な枠組み(リスクアセスメント、PDCAサイクル、附属書Aの管理策)は同じ
◦ CIAの3要素(機密性・完全性・可用性)を守ることが基本
• 違い
◦ 日本語で規格が整備されているため、社員教育や社内文書化に使いやすい
◦ 一部の注釈や用語が日本の法律(個人情報保護法など)に合わせて調整されている
◦ 国内監査や取引先への説明で「JIS版」を参照するとスムーズな場合がある
国際取引が多い企業はISO27001を重視、国内中心ならJIS Q 27001でも十分というケースが多いです。
JIS Q 27001の基本構成
JIS Q 27001は 0章〜10章 で構成され、以下のような内容が含まれます。
4章:組織の状況(どんな情報資産を守るか)
• 何を守るのかを明確にする段階
• 自社の情報資産(顧客データ、社員情報、システムなど)を洗い出す
• 利害関係者(顧客、取引先、規制当局など)が何を求めているかを把握する
• ISMSの「適用範囲」を決める(例:全社か、一部の部門か)
5章:リーダーシップ(経営層の関与)
• 経営層の関与を示す章
• トップマネジメントが「情報セキュリティを重視する」という方針を明文化
• 役割・責任・権限を明確にし、組織全体に浸透させる
• 例:社長が「情報セキュリティ基本方針」を発表し、全社員に周知
6章:計画(リスクアセスメントと対応策)
• リスクを洗い出し、対策を計画する章
• リスクアセスメントを実施(脅威・脆弱性・影響度を評価)
• 情報セキュリティの目的を設定(例:「1年以内にUSB持ち出しゼロ」)
• 目的を達成するための計画を立てる
7章:支援(教育・資源の確保)
• ISMSを運用するためのリソースを整える章
• 人材・予算・教育・ツールなどを確保
• 社員に必要な知識を教育(例:フィッシングメール訓練)
• 文書化(マニュアルや手順書)を整備し、誰でも参照できるようにする
8章:運用(セキュリティ対策の実施)
• 実際にセキュリティ対策を実行する章
• 計画に基づいてアクセス制御、暗号化、バックアップなどを実施
• インシデント(事故)が起きたときの対応手順を運用
• 例:不審メールを受け取ったら「情報システム部に即報告」というルールを実行
9章:パフォーマンス評価(監査・レビュー)
• 対策がうまく機能しているかをチェックする章
• 内部監査を行い、ルールが守られているか確認
• 経営層がレビューし、改善点を見つける
• 例:年1回の内部監査で「USB持ち出し禁止ルールが守られているか」を確認
10章:改善(継続的な改善活動)
• PDCAサイクルの「C(Check)→A(Act)」にあたる章
• 問題が見つかったら是正措置を取り、再発防止策を導入
• 継続的に改善していくことが求められる
• 例:監査で「パスワード管理が甘い」と判明 → パスワード管理ツールを導入
具体例:JIS Q 27001を導入するとどうなる?
• 例1:製造業の企業
→ 顧客データや設計図を扱うため、JIS Q 27001に基づきアクセス権限を厳格化。結果、情報漏洩リスクが大幅に低減。
• 例2:IT企業
→ クラウドサービスを提供するため、JIS Q 27001認証を取得。取引先から「信頼できる企業」と評価され、契約数が増加。
• 例3:中小企業
→ 社員教育をJIS版の日本語規格に沿って実施。専門用語がわかりやすく、従業員のセキュリティ意識が向上。
導入のメリット
• 顧客・取引先からの信頼性向上
• 情報漏洩やサイバー攻撃リスクの低減
• 国内法規(個人情報保護法など)への対応がしやすい
• 社員教育や内部監査が日本語で進めやすい
まとめ
• JIS Q 27001とは、ISO27001をベースにした日本版のISMS規格
• ISO27001との違いは、日本語対応と国内法規への配慮
• 導入することで、リスク低減+信頼性向上+教育のしやすさというメリットがある
今日からできることは、まず「自社の情報資産(顧客データ・社員情報・システムなど)」を洗い出すこと。 そこからJIS Q 27001の枠組みに沿って、守るべき情報とリスクを整理してみましょう。
この記事が少しでも参考になれば嬉しいです。
最後までお読みいただきありがとうございました!
コメント