はじめに:なぜ「エンタープライズアーキテクチャ」が重要なのか?
基本情報技術者試験のストラテジ系分野では、近年「エンタープライズアーキテクチャ(EA)」の出題頻度が高まっています。これは、企業のIT活用が単なる業務支援から、経営戦略と一体となった全体最適の実現へと進化していることを反映しています。EAは、そうした経営とITの橋渡しをするための設計思想であり、試験対策だけでなく、実務でも極めて重要な知識です。
オルビナ/基本情報技術者専門官言い換えるなら、EAとは大企業や政府などの複雑なシステムを上手く活用していくための「全体設計図」であり、いわば経営とITを結びつける大作戦です。
エンタープライズアーキテクチャの定義と目的
エンタープライズアーキテクチャとは、企業全体の業務と情報システムを体系的に可視化・整理し、全体最適なIT戦略の立案と実行を支援するフレームワークです。 その目的は、以下の3点に集約されます。
- 業務とITの整合性を確保すること 業務プロセスと情報システムがバラバラに設計されていると、非効率や重複が発生します。EAは両者を一体的に設計することで、整合性を保ちます。
- 全体最適を実現すること 個別のシステムや部門ごとの最適化ではなく、企業全体としての最適な構造を目指します。
- 変化に強い組織をつくること 市場や技術の変化に柔軟に対応できるよう、将来を見据えた設計を行います。



フレームワークとは、いわば「図鑑」のようなものです。つまり、この3つの目的を体系的に整理し、企業がどのように進めていけばよいかを示してくれる“設計図兼ガイドブック”の役割を果たします。
4つのアーキテクチャ:EAの構成要素を理解する
EAは、企業の構造を4つの視点から分解して捉えます。それぞれのアーキテクチャは、以下のような役割を持っています。
まず「ビジネスアーキテクチャ」は、企業の業務内容や業務プロセス、組織構造などを明確にするものです。どんな業務が、どの部門で、どのように行われているのかを可視化し、改善の出発点をつくります。
次に「データアーキテクチャ」は、業務で扱う情報やデータの構造、関係性を整理します。例えば、顧客情報や商品情報などのマスタデータがどのように管理されているかを明らかにします。
「アプリケーションアーキテクチャ」は、業務を支えるアプリケーションやシステムの構成、機能、相互連携を設計します。ここでは、どの業務にどのシステムが使われているか、重複や不足がないかをチェックします。
最後に「テクノロジーアーキテクチャ」は、システムを支える技術基盤、つまりネットワーク、サーバ、OS、ミドルウェアなどの構成を定義します。クラウド移行やセキュリティ対策もこの領域に含まれます。



4つのアーキテクチャは、企業全体の業務と情報システムを統一的に整理し、個別最適ではなく全体最適を実現するための設計図です。つまり、部門ごとにバラバラなシステムをなくし、会社全体で統一された仕組みを構築するための計画なのです。
この4つのアーキテクチャは基本情報技術者試験でも頻出のテーマなので、必ず覚えておきましょう。
EAと他のフレームワークとの関係
エンタープライズアーキテクチャ(EA)は、企業全体の業務と情報システムを体系的に整理するための設計思想ですが、単体で完結するものではありません。実際には、他のフレームワークや手法と連携して活用されることで、より効果的に機能します。
まず、共通フレーム(SLCP) です。これはソフトウェア開発のライフサイクルを標準化した指針であり、要件定義から設計、開発、テスト、運用、保守までのプロセスを体系化しています。EAを導入する際には、この共通フレームを参照することで、システム化計画や運用プロセスを整備しやすくなり、開発の品質や効率を高めることができます。
次に、COBIT(Control Objectives for Information and Related Technology) があります。これはITガバナンスの代表的なフレームワークで、情報システムをどのように統制・監査・評価するかを示すものです。EAによって業務やシステムの構造が可視化された後、その構造を「適切に管理できているか」「リスクを抑えられているか」を判断するためにCOBITが活用されます。つまり、EAが設計図なら、COBITはその設計図を正しく運用するためのルールブックです。
さらに、ITポートフォリオ があります。これはEAで整理されたIT資産を「戦略的投資」「業務効率化」「インフラ整備」などのカテゴリに分類し、投資の優先順位を決めるための手法です。例えば、短期的なコスト削減を狙う案件と、長期的な競争力強化を目指す案件をバランスよく組み合わせることで、企業全体の投資効果を最大化できます。EAが資産を見える化し、ITポートフォリオがその資産をどう活用するかを決める、という関係です。



実際に、大企業や政府機関などではこれらを連携させることで、システムの品質向上や投資効果の最大化に成功した事例が数多く報告されています。



まとめると、エンタープライズアーキテクチャは「企業全体の設計図」であり、試験に出るだけでなく、実務やキャリアでも役立つ知識です。
試験対策では 目的の3点と4つのアーキテクチャ をまず暗記し、過去問で確認することが合格への近道です。さらに、実務イメージを持ちながら学習すれば、知識が「武器」として長期的に活用できます。









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