基本情報技術者に出るシステムズエンジニアリングとMBSEについて

はじめに

現代の製品開発は、単なるモノづくりではなく「システムづくり」へと進化している。

自動車、医療機器、IoT家電、宇宙開発。あらゆる分野で、複数の技術領域が絡み合う複雑な開発が求められている。そんな中、注目されているのが「エンジニアリングシステム（システムズエンジニアリング）」というアプローチだ。

システムズエンジニアリングとは？

システムズエンジニアリング（Systems Engineering）とは、複数の専門分野を統合し、システム全体を俯瞰しながら設計・開発・運用・廃棄までを一貫してマネジメントする手法である。

単なるITシステム開発ではなく、「人・機械・ソフトウェア・環境」が一体となった複合的なシステムを対象とする。

モデルベースシステムズエンジニアリング（MBSE）の台頭

近年、システムズエンジニアリングの進化形として注目されているのが「MBSE（Model-Based Systems Engineering）」である。これは、設計や要件、検証プロセスをすべて「モデル」で表現することで、関係者間の認識のズレを防ぎながら開発を進める手法。

MBSEを導入することで、従来の開発プロセスに比べて多くの効果が期待できる。まず、設計段階でのミスを早期に発見できるため、後工程での手戻りを大幅に削減できる。また、要件変更が発生した際には、その影響範囲をモデル上で可視化できるため、迅速かつ正確な対応が可能となる。さらに、複数のドキュメント間で整合性を維持しやすくなり、情報の矛盾や不整合を防ぐことができる。加えて、開発過程で得られた知識を形式知として蓄積し、再利用性を高めることができる点も大きな利点である。

このように、MBSEは単なる効率化の手法ではなく、開発の品質向上と組織的な知識資産の強化を同時に実現するアプローチとして、今後ますます重要性を増していくと考えられる。

なぜ今、エンジニアリングシステムが必要なのか？

現代の製品開発は、AIやIoT、ロボティクスといった先端技術の導入によって、単なる単機能の製品から「システム・オブ・システムズ」へと進化している。その結果、従来のドキュメントベースの開発手法では複雑さに対応しきれず、限界が見え始めている。

さらに、グローバル競争の激化により、企業には「より速く、より高品質に」という相反する要求が突き付けられている。MBSE（Model-Based Systems Engineering）は、このスピードと品質の両立を可能にする手法として注目されている。

加えて、製品開発には設計者、製造者、ユーザー、法規制担当など多様な利害関係者が関わる。従来の文書中心のやり取りでは認識のズレが生じやすかったが、MBSEではモデルを共通言語として活用することで、関係者間の認識を一致させ、調整を円滑に進めることができる。

導入の課題と乗り越え方

もちろん、MBSEやシステムズエンジニアリングの導入には課題がある。代表的なのは、初期投資の負担、人材育成の必要性、そして組織文化の変革だ。これらは企業にとって「大きな壁」となるが、段階的な導入を進め、専門家のアドバイスを受けながら少しずつ慣れていくことで克服できる。また、経営層の強いコミットメントがあれば、組織全体として変革を推進しやすくなる。

まとめ：エンジニアリングシステムは「未来の当たり前」

エンジニアリングシステムは、単なる技術手法ではない。複雑な社会課題を解決するための「思考のフレームワーク」であり、未来の開発現場では当たり前の存在になるだろう。今こそ、全体を俯瞰し、モデルで語る開発へとシフトする時です。