情報セキュリティ諸規程とは
墨蘭/情報セキュリティマネジメント副専門官「情報セキュリティ諸規程」とは、企業や組織が情報を安全に守るために作る「ルールブック」のことです。
もっと具体的に言えば、会社の大切な情報(顧客情報、取引先データ、社内の機密情報など)を、サイバー攻撃や情報漏洩から守るために「誰が」「何を」「どのように」すべきかを明文化した文書の集まりです。
家に鍵をかけたり、貴重品を金庫にしまったりするのと同じように、デジタル時代の会社には「情報を守る仕組み」が必要です。その仕組みを文書化したものが情報セキュリティ諸規程なのです。
2026年、なぜ今まで以上に重要なのか
サイバー攻撃の急増
2026年現在、日本企業を狙ったサイバー攻撃は前年比で約30%増加しています。特に増えているのが「サプライチェーン攻撃」という手口です。これは、セキュリティが強固な大企業を直接狙うのではなく、その取引先である中小企業の弱い部分から侵入し、最終的に大企業の情報を盗み出すという巧妙な方法です。
2026年の新制度スタート
経済産業省は2026年度に「サプライチェーン強化に向けたセキュリティ対策評価制度」を開始する予定です。この制度では、企業のセキュリティ対策を★3から★5の段階で評価します。今後、この評価が取引の条件になる可能性が高く、「セキュリティ対策をしていないと、仕事がもらえない」という時代が来ているのです。
また、「サイバー対処能力強化法」という新しい法律も2026年中に施行される予定で、重要なシステムを持つ事業者にはセキュリティ対策が義務化されます。
情報セキュリティ諸規程には何が含まれる?





情報セキュリティ諸規程は、通常いくつかの文書で構成されています。主なものを見てみましょう。
1. 情報セキュリティポリシー(基本方針)
会社全体のセキュリティに対する姿勢や考え方を示す最上位の文書です。「当社は顧客情報を最重要資産として守ります」といった宣言が書かれています。
2. 情報セキュリティ規程(対策基準)
具体的なルールが書かれた文書です。例えば:
- パスワードは8文字以上で定期的に変更する
- 社外に持ち出すパソコンは暗号化する
- USBメモリの使用は事前申請が必要
- 退職時には全データを返却する
3. 実施手順書・マニュアル
実際の作業手順を詳しく説明した文書です。「パソコンがウイルスに感染したら、まずLANケーブルを抜き、次に上司に報告する」といった具体的な行動が書かれています。
4. インシデント対応規程
情報漏洩やサイバー攻撃が起きたときの対応手順です。誰に連絡するか、どう調査するか、お客様にどう報告するかなどが定められています。
5. アクセス権限管理規程
誰がどの情報にアクセスできるかを管理するルールです。「人事データは人事部のみ」「顧客情報は営業部と経理部のみ」といった制限を設けます。
実際に何をすればいいの?



情報セキュリティ諸規程を作っただけでは意味がありません。実際に運用することが大切です。
従業員教育
年に1回以上、全従業員にセキュリティ研修を実施します。最近の攻撃手法やフィッシングメールの見分け方などを学びます。
定期的な見直し
技術は日々進化し、攻撃手法も変わります。少なくとも年1回は規程を見直し、古くなった部分を更新します。
監査とチェック
規程通りに運用されているか、定期的にチェックします。例えば、パスワード管理が適切か、不要なアクセス権限が残っていないかなどを確認します。
2026年の新しい潮流


ゼロトラストモデルの標準化
「社内ネットワークは安全」という前提を捨て、すべてのアクセスを疑う「ゼロトラスト」という考え方が主流になっています。規程にもこの考え方を反映させることが求められています。
AI対策の必要性
生成AIを悪用した攻撃が増えています。AIが自動生成したフィッシングメールは本物そっくりで、見破るのが困難です。規程にAI関連のリスクへの対応を盛り込む必要があります。
評価制度への対応
2026年度下期から開始される新しい評価制度では、「ガバナンス整備」「取引先管理」「リスクの特定」「システムの防御」「攻撃等の検知」「インシデントの対応・復旧」といった項目が評価されます。情報セキュリティ諸規程は、これらの項目に対応する基盤となります。
中小企業でもできる?



「うちは小さな会社だから関係ない」と思われるかもしれませんが、むしろ中小企業こそ必要です。
なぜなら
- 大企業との取引で求められる
- セキュリティの弱い企業が攻撃の入口にされる
- 一度情報漏洩が起きると、会社の信用が失われる
ただし、最初から完璧を目指す必要はありません。IPAが提供する「SECURITY ACTION」という制度では、中小企業向けに基本的な対策から始められる仕組みが用意されています。まずは★1や★2から始めて、段階的にレベルアップしていくことができます。
まとめ:今すぐ始めることが大切





情報セキュリティ諸規程は、もはや「あったほうがいい」ものではなく、「なければビジネスができない」時代になりつつあります。
2026年は、セキュリティ対策評価制度の運用開始やサイバー対処能力強化法の施行など、政策と実務が大きく動く分岐点です。特に取引先から「セキュリティ対策の証明」を求められるケースが急増しており、対応が遅れると取引機会を失うリスクがあります。
まずは自社の現状を把握し、基本的な規程作りから始めましょう。完璧な規程を作ることよりも、「まず作って、実践して、改善する」というサイクルを回すことが重要です。
専門家の支援を受けることも有効です。情報セキュリティの専門家やITコーディネータに相談すれば、自社に適した規程作りをサポートしてもらえます。
2026年という転換点を迎えた今、情報セキュリティ諸規程の整備は、会社を守り、ビジネスを発展させるための必須の投資なのです。



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