はじめに
墨蘭/情報セキュリティマネジメント副専門官「情報セキュリティリスクアセスメント」という言葉を聞いたことはありますか?難しそうに聞こえますが、実は私たちの日常生活やビジネスを守るために欠かせない重要な取り組みです。



この記事では、一般の方にもわかりやすく、その意味と2026年の最新状況について解説します。
情報セキュリティリスクアセスメントとは





情報セキュリティリスクアセスメントとは、簡単に言えば「情報やシステムが抱えている危険を見つけて、その深刻さを評価すること」です。
例えば、家の防犯対策を考える場合を想像してみてください。まず「どこから泥棒が入りやすいか」「貴重品はどこにあるか」を確認し、「鍵が古い」「窓が弱い」といった問題点を見つけます。そして「この問題が起きたら、どれくらい困るか」を考えて、優先順位をつけて対策していきますよね。
情報セキュリティリスクアセスメントも、これとまったく同じ考え方です。会社や組織が持つ情報やシステムについて、次のようなことを行います。
- 資産の特定:守るべき大切な情報やシステムを洗い出す
- 脅威の識別:どんな危険があるかを確認する(サイバー攻撃、情報漏洩、システム障害など)
- 脆弱性の発見:弱点や問題点を見つける
- リスクの評価:問題が起きたときの影響の大きさと、起きる可能性を判断する
- 対策の優先順位づけ:どの問題から対処すべきかを決める
なぜ今、重要なのか



2026年現在、情報セキュリティリスクアセスメントの重要性はかつてないほど高まっています。その理由をいくつか見ていきましょう。
サプライチェーン攻撃の増加
現代のビジネスは、多くの取引先や協力会社とつながっています。攻撃者は、セキュリティが強固な大企業を直接狙うのではなく、対策が手薄な取引先企業を経由して侵入する手口を使うようになりました。
これを受けて、経済産業省は2026年10月から「サプライチェーン強化に向けたセキュリティ対策評価制度」の運用を開始する予定です。この制度では、企業のセキュリティ対策を星(★)の数で評価し、取引先のセキュリティレベルを可視化します。つまり、適切なリスクアセスメントを行っていない企業は、取引機会を失う可能性もあるのです。
AI時代の新たなリスク
2026年は、AIエージェント(自動で判断・実行するAI)が急速に普及しています。業務効率は向上しますが、新たなリスクも生まれています。
AIエージェントが広範な権限を持つと、それが乗っ取られた場合の被害は甚大です。攻撃者はAIを悪用して、自然な文章のフィッシングメールを大量生成したり、システムの弱点を自動で探したりできるようになっています。このため、AIに関連するリスクを正しく評価することが急務となっています。
ランサムウェアの進化
ランサムウェア(身代金要求型ウイルス)の手口も変化しています。従来はデータを暗号化して使えなくするだけでしたが、2026年には盗んだデータを分析し、最も価値のある情報を特定して、それをネタに脅迫する手法が主流になっています。AIを使ってデータの重要性を判断するため、より効果的な恐喝が可能になってしまいました。
実施の基本ステップ





情報セキュリティリスクアセスメントは、専門家でなくても基本的な考え方を理解できます。
ステップ1:守るべき情報を明確にする
まず、どんな情報やシステムを守る必要があるかを洗い出します。顧客情報、財務データ、製品の設計図、メールシステムなど、会社の活動に必要なものをリストアップします。
ステップ2:起こりうる脅威を考える
次に、どんな危険があるかを考えます。2026年の主な脅威には以下のようなものがあります。
- 高度化したフィッシング攻撃(AIで作られた自然な偽メール)
- AIエージェントの乗っ取り
- サプライチェーン経由の侵入
- 内部関係者による情報漏洩
- ランサムウェアによるデータ窃取
ステップ3:弱点を見つける
システムやプロセスの弱点を探します。古いソフトウェアを使っている、パスワード管理が甘い、従業員へのセキュリティ教育が不足しているなど、攻撃者に付け込まれそうなポイントを特定します。
ステップ4:リスクを数値化・優先順位づけ
見つかった問題について、「起きる可能性」と「起きたときの影響」を評価します。例えば、顧客データベースへの不正アクセスは影響が大きいので優先度が高く、古い社内システムの脆弱性は影響が限定的なら優先度は中程度、といった具合です。
ステップ5:対策を立てる
優先順位の高いリスクから順に、具体的な対策を決めます。技術的な対策だけでなく、従業員教育や業務手順の見直しなども含まれます。
2026年に注意すべきポイント


マシンアイデンティティの管理
AIエージェントや自動化システムが使う認証情報(IDやパスワード、APIキーなど)の管理が重要です。人間のアカウント以上に、これらの「機械の身分証明」が攻撃の標的になっています。
フィッシング耐性の強化
従来のパスワード認証では、どれだけ気をつけても高度なフィッシング攻撃を防げません。生体認証や物理的なセキュリティキーを使った多要素認証の導入が推奨されています。
継続的な監視体制
一度リスクアセスメントを行えば終わりではありません。新しい脅威は日々生まれているため、定期的な見直しと、システムの異常を素早く検知する仕組みが必要です。
まとめ
情報セキュリティリスクアセスメントは、組織の情報資産を守るための羅針盤です。2026年は、AI技術の進化、サプライチェーン攻撃の増加、そして新たな評価制度の導入により、その重要性がこれまで以上に高まっています。
大切なのは、「完璧なセキュリティ」を目指すのではなく、「現実的なリスクを理解し、優先順位をつけて対処する」という考え方です。家の防犯対策と同じように、まず現状を知り、重要なところから順に対策していく。この基本を押さえることで、企業も個人も、より安全にデジタル社会を活用できるようになります。



セキュリティは難しく感じるかもしれませんが、一歩一歩、できることから始めることが大切です。2026年という新しい時代に適応し、安心してビジネスや生活を営むために、情報セキュリティリスクアセスメントの考え方を理解し、実践していきましょう。










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