セキュアプロトコルとは?ネット時代に知っておきたい「安全な通信のルール」

目次

はじめに:なぜ「セキュアプロトコル」を知る必要があるのか

墨蘭/情報セキュリティマネジメント副専門官

インターネットでお買い物をしたり、銀行のサイトにログインしたり、メールを送ったり。私たちは毎日、膨大な量の個人情報をネットワーク上でやり取りしています。しかし、そのデータが誰かに盗み見られたり、改ざんされたりする危険性があることをご存知でしょうか?

そんな脅威から私たちを守ってくれるのが「セキュアプロトコル」です。この記事では、情報セキュリティにおけるセキュアプロトコルの意味を、専門知識がない方にもわかりやすく解説していきます。


セキュアプロトコルとは?まずは言葉の意味から理解しよう

「プロトコル」ってなに?

まず「プロトコル」という言葉を理解しましょう。プロトコルとは、簡単に言えば「コンピューター同士が通信するときのルール・約束事」のことです。

例えば、人間同士が会話するときには言葉(日本語や英語など)というルールがありますよね。コンピューター同士がデータをやり取りする際にも、お互いが理解できる共通のルールが必要です。それがプロトコルです。

「セキュア」の意味

「セキュア(secure)」は英語で「安全な」「保護された」という意味です。つまりセキュアプロトコルとは、「安全に通信するためのルール」ということになります。

セキュアプロトコルの正式な定義

専門的に言うと、セキュアプロトコル(またはセキュリティプロトコル)とは、通信の機密性(秘密を守る)完全性(改ざんを防ぐ)、認証(相手が本物か確認する)といったセキュリティ機能を実現するための通信規約のことです。具体的には、暗号化や電子署名、鍵交換といった技術が組み合わされています。


日常生活の中のセキュアプロトコル

墨蘭/情報セキュリティマネジメント副専門官

セキュアプロトコルと聞くと難しそうに感じるかもしれませんが、実は私たちは毎日のようにその恩恵を受けています。

例1:Webサイトの「https://」

ブラウザでWebサイトを見るとき、アドレスバーに「https://」と表示されているのを見たことがありませんか?この「s」は「secure(安全)」の頭文字で、TLS(Transport Layer Security)というセキュアプロトコルで通信が保護されていることを意味します。

銀行のサイトやショッピングサイトでクレジットカード番号を入力するとき、このhttpsによって情報が暗号化され、途中で誰かに盗み見られることを防いでいます。

例2:Wi-Fiのパスワード

自宅でWi-Fiに接続するときにパスワードを入力しますよね。これはWPA3WPA2といったセキュアプロトコルによって、無線通信が暗号化されているからです。もしこれがなければ、近所の人が簡単にあなたのネット通信を傍受できてしまいます。

例3:VPN(仮想プライベートネットワーク)

テレワークで会社のネットワークに接続するときに使うVPNも、セキュアプロトコルの一種です。インターネット上に仮想的な「トンネル」を作り、その中を通るデータを暗号化することで、外部からの盗聴を防いでいます。


セキュアプロトコルが守ってくれる3つのこと

墨蘭/情報セキュリティマネジメント副専門官

セキュアプロトコルは主に以下の3つの機能を提供しています。

1. 機密性(Confidentiality)

通信内容を第三者に見られないようにすることです。暗号化という技術を使って、データを読めない形に変換します。たとえ通信が傍受されても、暗号化されていれば内容を理解することはできません。

2. 完全性(Integrity)

データが途中で改ざんされていないことを保証します。例えば、送金額が100円から100万円に書き換えられていないか、といったことを検出できます。

3. 認証(Authentication)

通信相手が本当にその人(またはそのサーバー)であることを確認します。偽のサイトに誘導されて個人情報を入力してしまう「フィッシング詐欺」を防ぐためにも、この認証機能は重要です。


代表的なセキュアプロトコルの種類

TLS/SSL:インターネット通信の主役

TLS(Transport Layer Security)は、インターネット上で最も広く使われているセキュアプロトコルです。かつてはSSL(Secure Sockets Layer)と呼ばれていましたが、脆弱性が発見されたため、より安全なTLSへと進化しました。

2026年現在、主要なWebブラウザやサービスはTLS 1.2TLS 1.3をサポートしています。特にTLS 1.3は2018年に策定された最新バージョンで、従来よりも高速かつ安全な通信を実現しています。古いバージョンであるTLS 1.0やTLS 1.1は、主要ブラウザではすでに無効化されており、Microsoftのクラウドサービス「Azure」も2025年8月にTLS 1.0/1.1のサポートを終了しました。

SSH:サーバー管理の必需品

SSH(Secure Shell)は、リモートでコンピューターを操作する際に使われるセキュアプロトコルです。システム管理者がサーバーにログインして作業するときなどに利用されています。

IPsec:ネットワーク層での保護

IPsecは、インターネットの基盤となるIP(Internet Protocol)レベルで通信を暗号化するプロトコルです。VPNの実現などに使われています。

WPA3:無線LANの最新セキュリティ

WPA3は、Wi-Fi通信を保護するための最新規格です。従来のWPA2よりもパスワード推測攻撃に強く、公共Wi-Fiでの安全性も向上しています。


2025〜2026年の最新動向:セキュアプロトコルの世界で何が起きているか

TLS証明書の有効期間短縮へ

2025年4月、業界団体のCA/Browser Forumは、TLS証明書の有効期間を段階的に短縮し、2029年までに47日にする方針を承認しました。現在は最長398日(約1年)ですが、これが大幅に短縮されることで、万が一証明書が不正に取得されても被害を最小限に抑えられるようになります。

墨蘭/情報セキュリティマネジメント副専門官

有効期間が短いほど、万が一盗まれた証明書が悪用される期間も短くなるため、安全性が高まります。

VPNの脆弱性を狙うランサムウェア攻撃の増加

2026年1月の最新レポートによると、VPNの脆弱性を狙ったランサムウェア攻撃が増加しています。セキュアプロトコルを使っていても、ソフトウェアの更新を怠ると危険にさらされる可能性があります。企業では、VPNに代わる新しいセキュリティアーキテクチャであるSASE(Secure Access Service Edge)への移行も進んでいます。

AIを活用したサイバー攻撃の高度化

トレンドマイクロの「2026年セキュリティ脅威予測」では、AIを駆使したサイバー攻撃が増加すると警告されています。攻撃者がAIを使って脆弱性を自動的にスキャンしたり、攻撃手法をリアルタイムで適応させたりする時代が到来しつつあります。


未来への備え:量子コンピューター時代のセキュリティ

量子コンピューターの脅威とは?

現在広く使われている暗号技術(RSAやECCなど)は、従来のコンピューターでは解読に膨大な時間がかかることを前提に安全性が保たれています。しかし、量子コンピューターが実用化されると、これらの暗号がわずかな時間で破られる可能性があります。

専門家の予測では、10〜15年後には現在の暗号を破れる量子コンピューターが登場する可能性があるとされています。

耐量子暗号(ポスト量子暗号)への移行

この脅威に対応するため、量子コンピューターでも解読できない新しい暗号方式「耐量子暗号(PQC:Post-Quantum Cryptography)」の開発と標準化が急ピッチで進められています。

2024年8月、米国国立標準技術研究所(NIST)は初めて耐量子暗号の標準規格を発表しました。主なものとしては、鍵交換用のCRYSTALS-Kyber(ML-KEM)や、電子署名用のCRYSTALS-Dilithium(ML-DSA)などがあります。

各国政府の動き

日本政府は2025年11月、政府機関等における耐量子暗号への移行方針を公表し、原則2035年までにPQCへの移行を完了するという目標を掲げました。2026年度にはロードマップが策定される予定です。米国やEUも同様に2030年代半ばまでの移行を目指しており、世界的な暗号技術の大転換が始まっています。

「今」の通信も狙われている

注目すべきは、「Harvest Now, Decrypt Later(今収集して、後で解読する)」という攻撃手法です。現時点で暗号化された通信データを攻撃者が保存しておき、将来量子コンピューターが実用化された時点で解読するという手口です。長期間保護が必要な機密情報は、すでにこの脅威にさらされている可能性があります。


私たちにできること:セキュリティ意識を高めよう

セキュアプロトコルは専門家だけのものではありません。一般ユーザーとしても、以下のことを心がけることで自分の情報を守ることができます。

1. 「https://」を確認する習慣をつける

個人情報やクレジットカード情報を入力する前に、必ずアドレスバーが「https://」で始まっているか、鍵マークが表示されているかを確認しましょう。

2. ソフトウェアを最新に保つ

ブラウザやOS、アプリを常に最新の状態にアップデートしましょう。古いバージョンには脆弱性が残っている可能性があります。

3. 公共Wi-Fiでは慎重に

カフェや空港などの公共Wi-Fiでは、できるだけ機密性の高い操作(ネットバンキングなど)を避けるか、VPNを利用しましょう。

4. パスワード管理を見直す

強力なパスワードを設定し、サービスごとに異なるパスワードを使いましょう。パスワードマネージャーの利用も効果的です。

5. 二要素認証を有効にする

対応しているサービスでは、パスワードに加えてSMSやアプリによる認証を設定しましょう。万が一パスワードが漏洩しても、不正ログインを防ぐことができます。


まとめ

セキュアプロトコルとは、インターネット上で安全に通信するためのルール・約束事です。暗号化、認証、完全性の確保といった機能により、私たちのデータを盗聴や改ざんから守っています。

2026年現在、TLS 1.3が主流となり、さらなる安全性と高速性が実現しています。一方で、量子コンピューターの脅威に備えた耐量子暗号への移行も始まっており、暗号技術は大きな転換期を迎えています。

墨蘭/情報セキュリティマネジメント副専門官

私たち一般ユーザーも、httpsの確認やソフトウェアの更新など、日常的なセキュリティ対策を心がけることで、より安全にインターネットを利用することができます。技術の進化とともに脅威も変化していきますが、基本的なセキュリティ意識を持つことが、自分自身を守る第一歩となるのです。

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この記事を書いた人

ITTIのアバター ITTI 運営長

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調べものと学ぶことが止められなくなり、現在は以下の4ブログを運営中:
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