ソリューションって結局なに?
穹詠/情報セキュリティマネジメント主任最近、ニュースやビジネスの場面で「ソリューション」という言葉をよく耳にするようになりました。「ITソリューション」「DXソリューション」など、様々な場面で使われていますが、いったい何を意味しているのでしょうか?
ソリューション(Solution)とは、英語で「解決」や「解決策」を意味する言葉です。そしてソリューションビジネスとは、単に製品やサービスを販売するのではなく、お客様が抱える問題や課題を解決することを目的としたビジネスモデルのことを指します。
たとえば、パソコンを買いに来たお客様に対して「このパソコンは高性能で安いですよ」と勧めるのが従来の販売スタイルだとすれば、「お客様は何にお困りですか?在宅ワークで使いたいのですね。それならこのパソコンとこのソフト、そしてセキュリティ対策をセットでご提案します」と、課題解決の視点で提案するのがソリューションビジネスです。
ソリューションビジネスが注目される背景


なぜ「モノを売る」だけではダメになったのか
かつて日本の企業は「高品質」「メイドインジャパン」を武器に、優れた製品を作って販売することで成功してきました。しかし、時代とともに状況は大きく変化しています。
①製品やサービスの飽和 市場には似たような製品やサービスがあふれ、単純に「良いモノを作れば売れる」という時代ではなくなりました。機能や価格だけでは差別化が難しくなっています。
②お客様のニーズの多様化・複雑化 企業が抱える課題は、以前より複雑になっています。たとえば、単にパソコンを導入するだけでなく、セキュリティ対策、クラウドとの連携、社員教育まで含めた「働き方改革」という大きなテーマに取り組む必要があります。
③デジタル技術の急速な進化 AI(人工知能)、IoT(モノのインターネット)、クラウドなど、新しい技術が次々と登場しています。これらの技術をどう活用すればいいのか、多くの企業が頭を悩ませています。
ソリューションという言葉の起源
「ソリューション」という言葉がビジネスの世界で使われ始めたのは、1987年にアメリカの大手IT企業IBMが経営計画の中で、コンピューターを納入する際の顧客サービスについて使用したことがきっかけとされています。
それから約40年、デジタル技術の進展とともに、ソリューションビジネスはIT業界だけでなく、金融、製造、運輸、広告など、あらゆる業界に広がっています。
2026年のソリューションビジネス最新トレンド





2026年現在、ソリューションビジネスは大きな転換期を迎えています。特に注目すべきトレンドを見ていきましょう。
トレンド1:AIを活用したソリューションの本格化
2026年は「AI活用が企業の成功を左右する年」と言われています。ガートナー社(世界的なIT調査会社)が発表した「2026年の戦略的テクノロジのトップ・トレンド」では、AIに関連する技術が中心的な位置を占めています。
具体的には、以下のようなAIソリューションが注目されています。
・AIネイティブ開発プラットフォーム 生成AIを活用して、ソフトウェアをより迅速かつ容易に作成できるプラットフォームです。これにより、専門的なプログラミング知識がなくても、業務に必要なアプリケーションを作れるようになってきています。
・マルチエージェント・システム 複数のAIが役割分担しながら協力して、複雑な仕事をこなすシステムです。たとえば、顧客対応、データ分析、レポート作成をそれぞれ担当するAIが連携して、業務全体を自動化します。
・ドメイン特化言語モデル 金融、製造、医療など、特定の業界に特化したAIモデルです。一般的なAIより、その業界特有の専門用語や規制を理解しているため、より正確で実用的な回答が得られます。
トレンド2:DX(デジタルトランスフォーメーション)ソリューションの深化
多くの企業が「デジタル化」から一歩進んで、ビジネスモデル自体の変革に取り組んでいます。単にパソコンやシステムを導入するだけでなく、会社の仕組み全体を見直す「真のDX」が求められています。
DXソリューションの具体例:
- 製造業向け:AIを活用した品質管理、予知保全(故障を予測して事前に対応)、生産ラインの自動最適化
- 小売業向け:購入履歴やデータ分析による顧客一人ひとりへのパーソナライズ提案、需要予測による在庫最適化
- 金融業向け:AIを活用した与信審査、不正検知、顧客対応の自動化
- 医療業界向け:AIによる画像診断支援、電子カルテの音声入力、遠隔医療システム
トレンド3:セキュリティソリューションの重要性増大
AI活用が広がる一方で、サイバー攻撃のリスクも高まっています。2026年のトレンドとして「先制的サイバーセキュリティ」が注目されています。これは、攻撃を受けてから対処するのではなく、攻撃が起きる前に予防するアプローチです。
また、AIを活用したセキュリティプラットフォームも登場し、膨大なデータから不審な動きを検出して、自動的に対応できるようになっています。
トレンド4:従業員のリスキリング(学び直し)支援ソリューション
IBMの調査によると、経営者の多くは「2026年末までに従業員の56%でリスキリング(新しいスキルの習得)が必要になる」と予測しています。
そのため、以下のような人材育成ソリューションへの需要が高まっています。
- AIの基礎知識を学ぶオンライン研修プログラム
- データ分析スキルを身につけるトレーニング
- デジタルツールの活用方法を教えるeラーニング
具体的なソリューションビジネスの事例


事例1:ブリヂストンのタイヤソリューション
タイヤメーカーのブリヂストンは、単にタイヤを売るだけでなく、「ソリューションカンパニー」への変革を進めています。
具体的には、AIを活用してリアルタイムで最適な製造条件を導き出し、品質向上と効率化を実現しています。また、空気充填が不要な次世代タイヤ「AirFree」の開発にも、シミュレーション技術と機械学習を活用しており、2026年の実用化を目指しています。
事例2:AGCのガラスソリューション
ガラスメーカーのAGCは、「価値創造DXの推進」を主要戦略に掲げています。
たとえば、異常検知AIを活用した自動車用フロントガラスの無人自動検査システムを導入し、年間約3万時間の検査作業時間を削減する見込みです。また、センサー付きコンテナで内容量をリアルタイムに把握するサービスなど、ガラスという製品を超えた価値を提供しています。
事例3:清水建設の建設現場ソリューション
清水建設は、建設現場での事故防止のため、AIを活用した安全管理ソリューションを開発しました。
画像解析AIにより、作業員の姿勢や向きを推定し、重機との距離や作業員が重機を視認しているかをチェックします。これにより事故を未然に防ぐだけでなく、社員の行動評価にも活用しています。このシステムは外販も始まり、他社の建設現場でも使われています。
事例4:京セラの製造業DXソリューション
京セラでは、現場の社員が「DXエバンジェリスト」として、業務改善を推進しています。
kintoneやRPAによる業務効率化から始まり、Pythonと生成AIを組み合わせた図面解析フローの構築など、現場発の小さなAI活用を起点に、全社展開へ広げていった成功事例として注目されています。
ソリューションビジネスを成功させる3つのポイント


ポイント1:お客様の「本当の課題」を見つける
お客様の課題には、本人が認識している「顕在課題」と、まだ気づいていない「潜在課題」があります。
たとえば、お客様が「売上を伸ばしたい」と言っていても、本当の課題は「既存顧客の離脱」かもしれません。表面的な要望だけでなく、ヒアリングやデータ分析を通じて、根本的な課題を特定することが重要です。
ポイント2:お客様視点で考える
自社製品を売り込むことを優先するのではなく、「お客様にとって何が最適か」を考えることが大切です。場合によっては、自社製品ではなく他社の製品やサービスを紹介することもあり得ます。
この姿勢が信頼関係を築き、長期的なビジネスパートナーとしての関係につながります。
ポイント3:継続的なサポートと改善
ソリューションの提供は、導入して終わりではありません。お客様の状況や課題は変化していくため、継続的にサポートし、必要に応じて改善していくことが求められます。
これが「モノを売る」ビジネスとソリューションビジネスの大きな違いです。
ソリューションビジネスの種類と分野



ソリューションビジネスは、お客様の課題がある場所ならどこでも成り立ちます。代表的な分野を紹介します。
ITソリューション
コンピューターシステムやソフトウェアを活用して、業務効率化や生産性向上を実現します。クラウドサービス、業務システムの構築、データベース管理などが含まれます。
IoTソリューション
インターネットに接続されたセンサーやデバイスとコンピューターを組み合わせ、生産管理や設備監視などを行います。工場の機械の稼働状況をリアルタイムで把握したり、農業で土壌の状態を監視したりする例があります。
DXソリューション
デジタル技術を活用して、ビジネスモデル自体を変革するサービスです。単なるIT化ではなく、会社の仕組みや働き方を根本から見直すことを支援します。
AIソリューション
人工知能を活用して、予測、分析、自動化などを行います。チャットボットによる顧客対応、画像認識による品質検査、需要予測など、応用範囲は広がり続けています。
サステナビリティソリューション
環境問題や社会課題の解決を支援するサービスです。CO2排出量の可視化、再生可能エネルギーの導入支援、サプライチェーンの持続可能性評価などがあります。
2026年以降のソリューションビジネスの展望


AIと人間の協働が当たり前に
2026年以降、AIは「あると便利なツール」から「企業の競争力を左右する必須のテクノロジー」に変わりつつあります。しかし、AIがすべてを代替するわけではありません。
人間にしかできない創造的な仕事や、複雑な判断が必要な業務は残ります。AIの得意なことはAIに任せ、人間は人間にしかできないことに集中する「AI+人間」の協働モデルが主流になっていくでしょう。
顧客との信頼関係がより重要に
IBMの調査によると、消費者の89%はAIとやり取りしていることを明示してほしいと考えており、AIやデータの使い方を隠すと信頼は急速に失われます。
ソリューションを提供する企業には、透明性と誠実さがこれまで以上に求められています。
業界の垣根を超えたソリューション
従来は業界ごとに分かれていたソリューションが、業界の垣根を超えて連携するようになっています。
たとえば、自動車メーカーとIT企業が協力して自動運転システムを開発したり、医療機関と通信会社が連携して遠隔医療を提供したりする例が増えています。
まとめ:ソリューションビジネスは「お客様の成功」を追求すること
ソリューションビジネスの本質は、「モノを売る」のではなく「お客様の成功を支援する」という姿勢にあります。
2026年現在、AI技術の進化により、ソリューションの可能性は大きく広がっています。しかし、どれだけ技術が進歩しても、お客様の課題を理解し、最適な解決策を提案するという基本は変わりません。
これからビジネスを始める方、キャリアを考えている方にとって、「お客様の課題を解決する」というソリューションの考え方は、どの業界でも活きる普遍的な価値観です。



技術は手段であり、目的は常に「お客様の課題解決」にあることを忘れずに、ソリューションビジネスの世界に飛び込んでみてはいかがでしょうか。










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