はじめに ― なぜ「信頼性」を数字にするの?
幽灯子/基本情報技術者副専門官私たちの生活は、ATM・電車の運行システム・ネット通販など、たくさんのシステムに支えられています。でも、どんなシステムにも「壊れる瞬間」はあります。
そこで大切になるのが、「どれくらい壊れにくいか」「壊れてもどれくらい早く直るか」を数字で表す仕組みです。これが「信頼性指標」と呼ばれるものです。
基本情報技術者試験(FE試験)では、この信頼性指標がよく出題されます。ここでは、試験に出る主要な指標を「自動販売機」にたとえながら解説していきます。
1. MTBF(平均故障間隔)― 「どれくらい長く元気でいられる?」





ひとことで言うと、故障と故障の間に、システムが正常に動いている平均時間のこと。
自販機でたとえると
ある自販機が、1回目の故障までに 200時間 動き、修理後に 300時間 動き、また修理後に 250時間 動いたとします。
MTBF = (200 + 300 + 250) ÷ 3 = 250時間
つまり「この自販機は平均して250時間に1回壊れる」ということ。MTBFが大きいほど壊れにくい=信頼性が高い、と判断できます。
2. MTTR(平均修復時間)― 「壊れたら直すのにどれくらいかかる?」



ひとことで言うと、故障が起きてから直るまでの平均時間のこと。
自販機でたとえると
3回の故障で、修理にそれぞれ 2時間・4時間・3時間 かかったとします。
MTTR = (2 + 4 + 3) ÷ 3 = 3時間
「壊れても平均3時間で直る」ということ。MTTRが小さいほど復旧が早い=保守性が高い、と判断できます。
3. 稼働率(可用性)― 「全体のうち、どれくらい使える状態?」



ひとことで言うと、システムが使いたいときにちゃんと使える割合のこと。
計算式
稼働率 = MTBF ÷ (MTBF + MTTR)
さっきの自販機の場合
稼働率 = 250 ÷ (250 + 3) = 250 ÷ 253 ≒ 0.988 → 約98.8%
「100時間のうち約98.8時間は使える状態」という意味です。
「ナイン」で表す世界
実際のIT業界では、稼働率を「9がいくつ並ぶか」で表すことがあります。
| 呼び方 | 稼働率 | 年間の停止時間(目安) |
|---|---|---|
| ツーナイン | 99% | 約3.65日 |
| スリーナイン | 99.9% | 約8.8時間 |
| フォーナイン | 99.99% | 約53分 |
| ファイブナイン | 99.999% | 約5分 |
銀行のATMや航空管制のような「止まったら大問題」のシステムは、フォーナイン以上が求められます。
4. 故障率 ― 「どれくらいの頻度で壊れる?」



ひとことで言うと、単位時間あたりに故障が起きる確率のこと。
計算式
故障率 = 1 ÷ MTBF
さっきの自販機なら 1 ÷ 250 = 0.004(1時間あたり0.4%の確率で壊れる)。
バスタブ曲線 ― 故障率は時間で変わる
機械やシステムの故障率は、使い始めから使い終わりまでに 3つの時期 を経ます。グラフの形がバスタブ(浴槽)に似ているので「バスタブ曲線」と呼ばれます。
故障率
高 │ \ /
│ \ /
│ \__/
低 │
└──────────────→ 時間
初期故障 偶発故障 摩耗故障
(序盤) (安定期) (終盤)
- 初期故障期: 買ったばかりで不良品が見つかる時期。初期不良。
- 偶発故障期: 安定して動く時期。故障はランダムにしか起きない。
- 摩耗故障期: 部品が古くなって故障が増える時期。寿命が近い。
5. 複数のシステムをつなぐときの稼働率



試験では「システムを複数組み合わせたときの全体の稼働率」もよく出ます。つなぎ方には 直列 と 並列 の2パターンがあります。
直列接続 ― 「どれか1つ壊れたら全部止まる」
クリスマスの電飾を思い浮かべてください。1個の電球が切れると全部消えるタイプです。
全体の稼働率 = 各システムの稼働率をかけ算
例:稼働率 0.9 のシステムを3つ直列
→ 0.9 × 0.9 × 0.9 = 0.729(約73%)
直列が増えるほど全体の稼働率は 下がります。
並列接続 ― 「全部壊れない限り動く」
予備の電源を用意しておくイメージです。メインが壊れてもバックアップが動きます。
全体の稼働率 = 1 - (各システムの故障率をかけ算)
例:稼働率 0.9 のシステムを2つ並列
→ 1 - (0.1 × 0.1) = 1 - 0.01 = 0.99(99%)
並列が増えるほど全体の稼働率は 上がります。
直列+並列の複合問題(試験頻出!)
試験では、直列と並列が組み合わさった図が出ます。解き方のコツは次のとおりです。
- まず 並列部分 をひとかたまりとして稼働率を計算する
- 次に 直列部分 としてかけ算する
例:AとBが並列、その結果とCが直列
┌─ A(0.9) ─┐
────┤ ├──── C(0.95) ────
└─ B(0.9) ─┘
① 並列部分:1 - (0.1 × 0.1) = 0.99
② 直列部分:0.99 × 0.95 = 0.9405 → 約94%
6. 試験対策 ― おさえておくべきポイントまとめ


| 指標 | 意味 | 覚え方 |
|---|---|---|
| MTBF | 壊れるまでの平均時間 | Between Failures → 故障と故障の「間」 |
| MTTR | 直すのにかかる平均時間 | To Repair → 修理「まで」 |
| 稼働率 | 使える時間の割合 | MTBF ÷ (MTBF + MTTR) |
| 故障率 | 壊れやすさ | 1 ÷ MTBF |
| 直列 | 全部必要 → かけ算 | 1つでもダメなら全滅 |
| 並列 | どれか動けばOK → 1-(故障率のかけ算) | 予備があるから安心 |
計算問題を解くコツ
- 稼働率の式を丸暗記 → MTBF ÷ (MTBF + MTTR)
- 直列・並列は 図を描いて 整理する
- 並列を先に計算 → 直列でかけ算、の順番を守る
- 小数の計算ミスに注意(電卓は使えないので分数で処理するのもアリ)
おわりに
「信頼性」というと難しそうに聞こえますが、要は 「どれくらい元気に動くか」「壊れたらどれくらいで直るか」「全体としてどれくらい頼れるか」 を数字にしただけです。



この考え方は試験だけでなく、たとえばクラウドサービスを選ぶときの「SLA(サービスレベル保証)」を読み解くときにも役立ちます。日常と試験、どちらにも活きる知識としてぜひ身につけてください。














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