はじめに
幽灯子/基本情報技術者副専門官「ファシリティマネジメント」という言葉を聞いたことはありますか?少し難しそうな響きですが、実は私たちの身近にある「建物や設備の管理」に関する考え方です。基本情報技術者試験では、企業のIT戦略や経営を支える重要なテーマとして出題されるため、しっかり理解しておくことが大切です。
この記事では、専門用語をできるだけ使わずに、ファシリティマネジメントの基本から試験頻出ポイントまでをわかりやすく解説します。
ファシリティマネジメントとは?





ファシリティマネジメント(Facility Management、略してFM)とは、企業や組織が保有するあらゆる施設・設備・環境を、総合的かつ戦略的に管理・活用することを指します。
「ファシリティ(Facility)」とは、日本語で「施設」「設備」「環境」を意味します。オフィスビル、工場、データセンター、電力設備、空調設備、ネットワーク配線など、会社が仕事をするために必要なあらゆるものがファシリティに含まれます。
ただ単に「建物を管理する」というだけではなく、コストを最適化しながら、従業員が働きやすい環境を維持し、企業の経営目標を達成することを支援するという点が重要です。
わかりやすい例えで理解しよう
たとえば、あなたが大きな会社のオフィスビルで働いているとします。毎日快適に仕事ができているのは、誰かが次のようなことを管理しているからです。
- エアコンや照明が正常に動いている
- 電力や水道が安定して供給されている
- トイレや食堂が清潔に保たれている
- インターネット回線が途切れない
- 火災や地震に備えた避難設備が整っている
これらをバラバラに管理するのではなく、一体的に計画・実行・改善していく仕組みがファシリティマネジメントです。
ITとファシリティマネジメントの関係



基本情報技術者試験でファシリティマネジメントが出題されるのは、ITシステムを動かすためのインフラ(基盤)と深く関係しているからです。
コンピュータやサーバーが正常に動作するためには、次のような環境が必要です。
- 電源設備:停電が起きてもシステムが落ちないようにするUPS(無停電電源装置)
- 空調設備:サーバーが熱くなりすぎないよう温度を管理する冷却システム
- セキュリティ設備:不正な人物の侵入を防ぐ入退室管理システム
- 通信設備:高速・安定したネットワークインフラ
- 防災設備:火災感知器や消火設備
これらをすべて適切に管理することで、はじめてITシステムは安定して稼働できます。逆に言えば、ファシリティ管理がずさんだと、サーバーが熱で故障したり、停電でシステムが止まったり、不正侵入が起きたりといった重大なトラブルが発生します。
試験に出やすい!ファシリティマネジメントの重要な構成要素
1. 電源管理(UPS・自家発電設備)
UPS(Uninterruptible Power Supply=無停電電源装置)は、停電が発生した際にも一定時間電力を供給し続ける装置です。重要なサーバーやネットワーク機器はUPSを介して電源に接続されており、停電が起きても安全にシャットダウンする時間を確保できます。
大規模なデータセンターでは、UPSに加えて自家発電設備(非常用発電機)も備え、長時間の停電にも対応します。
2. 空調・冷却管理
コンピュータのCPUやサーバーは動作中に大量の熱を発生させます。適切な温度管理ができないと機器が故障したり、性能が低下したりします。そのため、サーバールームやデータセンターには専用の空調設備が必要です。温度だけでなく、湿度の管理も重要です(湿度が高すぎると結露が起き、低すぎると静電気が発生します)。
3. 入退室管理
重要なサーバーや機密情報を守るためには、物理的なセキュリティも欠かせません。ICカードや生体認証(指紋・顔認識など)を使った入退室管理システムを設置し、許可された人のみが立ち入れるようにします。また、入退室の記録を保存しておくことで、万が一問題が起きた際に追跡調査ができます。
4. 耐震・防火・防水対策
自然災害や火災からITシステムを守るための対策も、ファシリティマネジメントの重要な一部です。
- 耐震対策:サーバーラックや機器の転倒防止、建物自体の免震・制震構造
- 防火対策:ガス消火設備(水では機器が壊れるため、ハロン代替ガスや窒素ガスを使う)
- 防水・浸水対策:床の嵩上げ、防水扉の設置
5. 省エネルギー・環境対応
近年はPUE(Power Usage Effectiveness)という指標が重要視されています。PUEとは、データセンター全体の消費電力をIT機器だけの消費電力で割った値で、理想値は1.0(つまりIT機器以外に電力が一切使われない状態)です。PUEが低いほど省エネ性能が高いとされます。
環境への配慮(カーボンニュートラルやSDGs)の観点から、太陽光発電の導入や再生可能エネルギーの活用もファシリティマネジメントの課題となっています。
ファシリティマネジメントの目的とメリット



ファシリティマネジメントを適切に行うことで、企業には次のようなメリットがあります。
コスト削減:設備を計画的に維持・更新することで、突発的な故障による修理費用や業務停止による損失を抑えられます。
業務効率の向上:快適で安全な職場環境を維持することで、従業員のパフォーマンスが上がります。
事業継続性の確保(BCP):災害や障害が発生しても、事業を継続・早期復旧できる体制を整えます。
法令遵守:建物や設備に関する各種法律・規制(消防法、建築基準法など)を適切に守れます。
CAFM(コンピューター支援ファシリティマネジメント)



最近では、ITを活用してファシリティを管理するCAFM(Computer Aided Facility Management)という手法も登場しています。
建物内の設備情報をデータベース化し、コンピューターで一元管理することで、効率的な運用・保守が可能になります。IoTセンサーと組み合わせて、リアルタイムで設備の状態を監視する取り組みも広がっています。
試験直前!まとめチェックリスト





試験に備えて、以下のポイントを確認しておきましょう。
- ファシリティマネジメントとは、施設・設備を総合的・戦略的に管理すること
- UPSは停電時に電力を供給し続ける装置(システムの安全なシャットダウンを確保)
- サーバールームの空調管理は温度・湿度の両方が重要
- 入退室管理はICカードや生体認証で物理セキュリティを確保
- 防火設備はガス消火を使用(水は機器を破損させるため不可)
- 耐震対策はサーバー機器の転倒防止と建物構造の両面から実施
- PUEはデータセンターの省エネ効率を示す指標(低いほど良い)
- CAFMはITを活用したファシリティ管理の手法
- BCP(事業継続計画)との連携が重要
おわりに
ファシリティマネジメントは、「建物の管理なんてIT試験と関係ないのでは?」と思われがちですが、実はITシステムを安定稼働させるための土台となる重要な概念です。コンピューターや通信機器は、適切な電源・温度・セキュリティ環境があってはじめて機能します。



基本情報技術者試験では、経営戦略やシステム管理の視点から出題されることが多いので、「なぜファシリティ管理が必要か」という理由を理解したうえで、各要素の役割を覚えておくと、応用問題にも対応しやすくなります。ぜひこの記事を参考に、試験合格を目指してください!














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