はじめに:私たちの生活を支える「見えない力」
穹詠/情報セキュリティマネジメント主任スマートフォンで動画を観たり、LINEでメッセージを送ったり、エアコンを遠隔操作したり。こうした日常の当たり前の行動の裏側で、実は「データ通信」と「制御」という2つの技術が密かに働いています。この2つは、現代社会のあらゆるデジタルサービスを支える「縁の下の力持ち」です。
2026年現在、AIの爆発的な普及や5G/6Gといった次世代通信技術の発展により、データ通信と制御の世界は大きな変革期を迎えています。この記事では、専門知識がなくても理解できるよう、これらの技術を身近な例を交えながらわかりやすく解説していきます。
データ通信とは? ~ 情報を届ける「配達員」~


基本的な仕組み
「データ通信」とは、簡単に言えば情報を別の場所に届けることです。手紙を郵便で送るのと同じように、デジタルの世界では「データ」という形で情報をやり取りします。
例えば、あなたがスマホでYouTubeを観るとき、以下のようなことが起きています:
- あなたが「再生ボタン」をタップする
- その情報がYouTubeのサーバー(巨大なコンピュータ)に届く
- サーバーが動画データをあなたのスマホに送り返す
- スマホで動画が再生される
この一連の流れで、情報が行ったり来たりしているのが「データ通信」です。
データ通信の3つの特徴
2026年の通信技術では、主に3つの性能が重視されています。
1. 高速・大容量 より多くのデータを、より速く送れること。4K・8Kの高画質動画やVR(仮想現実)コンテンツなど、データ量が膨大なサービスには欠かせません。現在主流の5Gでは最大20Gbps(ギガビット毎秒)、将来の6Gでは100Gbps以上の速度が目指されています。
2. 低遅延 データが届くまでの「待ち時間」が短いこと。オンラインゲームでボタンを押してからキャラクターが動くまでにタイムラグがあると困りますよね。5Gでは1ミリ秒(1000分の1秒)以下、6Gではさらに短い0.1ミリ秒以下を目指しています。
3. 多数同時接続 たくさんの機器が同時につながれること。家の中だけでもスマホ、パソコン、テレビ、エアコン、冷蔵庫など、ネットにつながる機器は増え続けています。5Gでは1平方kmあたり100万台、6Gでは1000万台の接続を目指しています。
制御とは? ~ 機械を動かす「指揮者」~
基本的な仕組み
一方の「制御」とは、機械やシステムを思い通りに動かすことです。オーケストラの指揮者が楽団員に「ここで強く」「ここは静かに」と指示を出すように、制御技術は様々な機器に「動け」「止まれ」「温度を下げろ」といった命令を出します。
身近な例で考えてみましょう:
- エアコンのリモコン:「25℃に設定」という命令を送り、エアコンを制御
- 自動ドア:人を感知したら「開け」という命令が発動
- エレベーター:ボタンを押すと「3階に行け」という命令が伝わる
これらすべてが「制御」の一種です。
制御で重要な「フィードバック」
優れた制御には「フィードバック」という仕組みが欠かせません。これは、結果を確認しながら調整することです。
エアコンを例にすると:
- 「25℃にして」と設定する
- エアコンが冷房を開始する
- 温度センサーが「今26℃」と報告(フィードバック)
- 「まだ足りない」と判断して冷房を続ける
- 「25℃になった」と報告
- 冷房をゆるめる
このように、状況を確認しながら調整を続けることで、正確な制御が実現します。
データ通信と制御の関係 ~ 切っても切れない仲 ~


なぜセットで語られるのか
現代のシステムでは、「データ通信」と「制御」は密接につながっています。
例えば、スマートフォンでエアコンを遠隔操作する場合:
- スマホで「エアコンをつけて」とアプリを操作(制御命令の入力)
- その命令がインターネットを通じてエアコンに届く(データ通信)
- エアコンが命令を受けて動き出す(制御の実行)
- 「動き始めました」という状態がスマホに届く(データ通信)
- アプリに「運転中」と表示される
つまり、制御命令を届けるのにデータ通信が必要であり、正確に制御するためのフィードバック情報もデータ通信で送られるのです。
5G時代の大きな変化:「分離」という考え方
2020年代に入り、5G(第5世代移動通信システム)が普及する中で、通信の世界には大きな変化がありました。それが「データ通信」と「制御データ」の機能の明確な分離です。
従来の通信システムでは、動画などの大きなデータも、「つながりました」「切断します」といった制御情報も、同じ仕組みで扱われていました。しかし5Gでは、これらを別々に管理する設計に変わりました。
なぜでしょうか?それは、求められる性能が違うからです。
- データ通信:大容量を効率よく送りたい
- 制御データ:小さくても確実に、すぐに届けたい
例えるなら、宅配便(大きな荷物を確実に届ける)と電報(短いメッセージを最速で届ける)を同じ仕組みで運ぶのは非効率ですよね。5Gでは、これらを分けて管理することで、それぞれに最適化できるようになりました。
2026年の最新トレンド


AIとデータ通信・制御の融合
2026年現在、最も注目されているのがAI(人工知能)との融合です。ガートナー社が発表した「2026年の戦略的テクノロジートレンド」でも、AIはもはや「選択肢」ではなく「前提条件」になったと指摘されています。
具体的には:
1. ネットワークの自動最適化 AIがネットワークの混雑状況をリアルタイムで分析し、自動的に最適なルートを選んでデータを流します。渋滞予測カーナビのネットワーク版といえます。NTTドコモは5GシステムにAIを活用した「NWDAF」という機能を導入し、トラフィック予測や端末の挙動パターン学習を実現しています。
2. 自律的な機器制御 「フィジカルAI」と呼ばれる技術が注目されています。これは、工場の設備や自動運転車などを、AIが状況を判断しながら自律的に制御する技術です。2026年は、この技術が研究段階から実用段階へと大きく進化する年とされています。
光電融合技術 ~ 電気から光へ ~
NTTが推進する次世代通信基盤「IOWN(アイオン)」では、光電融合技術の実用化が進んでいます。
現在、データセンター内のコンピュータ同士は電気信号でやり取りしていますが、これを光信号に置き換えることで、消費電力を大幅に削減しながら、より高速な通信が可能になります。2026年は、この技術を巡って世界中の企業が競争を繰り広げる勝負の年となっています。
宇宙通信の本格化
2026年、通信分野で大きく動いているのが宇宙通信です。
- Starlink(スペースX):すでにサービス提供中
- Project Kuiper(アマゾン):2026年からサービス開始予定
- HAPS(ソフトバンク):成層圏に浮かぶ「空飛ぶ基地局」として2026年にプレ商用化を計画
これらにより、山間部や海上、さらには災害時でも途切れない通信環境の実現が期待されています。
5G SA(スタンドアローン)の本格運用
「真の5G」と呼ばれる5G SA(スタンドアローン)の本格運用も2026年の注目ポイントです。これまでの5Gは、実は4Gの設備を一部活用した「ハイブリッド型」でした。5G SAでは、5G専用の設備だけで運用することで、5G本来の性能をフルに発揮できるようになります。
6Gの世界 ~ 2030年に向けて ~


6Gで実現する未来
2030年頃の実用化を目指す6G(第6世代移動通信システム)では、さらに革新的な制御が可能になります。
1. 完全自動運転 0.1ミリ秒以下という超低遅延により、車同士がリアルタイムで情報交換。信号待ちや渋滞が発生しない「超相互制御型ネットワーク」の実現が期待されています。
2. 遠隔手術 離れた場所にいる医師が、ロボットを使って手術を行う。わずかな遅延も許されない医療分野でも、6Gの超低遅延が活躍します。
3. デジタルツイン 現実世界の工場や都市を、デジタル空間に完全に再現。センサーからのデータ収集と、機器への制御命令を瞬時にやり取りすることで、現実とデジタルが完全に連動する世界が生まれます。
私たちの生活はどう変わる?
6Gが実現すると:
- 店舗の完全無人化:AIが接客し、IoTセンサーが商品を検知して自動精算
- 遠隔教育・医療の一般化:どこに住んでいても最先端のサービスを受けられる
- スマートファクトリー:工場のロボットが自律的に判断・連携して製品を生産
通信エリアも、地上だけでなく高度1万m、200海里先の海上、さらには宇宙にまで広がる「超カバレッジ拡張」が目指されています。
まとめ:これからの時代を生きるために
「データ通信」は情報を届ける仕組み、「制御」は機械を動かす仕組み。この2つは、現代社会のデジタルサービスを支える両輪です。
2026年現在、AIの進化、光電融合技術、宇宙通信など、これらの技術は急速に発展しています。そして2030年代には、6Gの登場により、自動運転、遠隔医療、スマートシティなど、SF映画のような世界が現実になろうとしています。
専門的な知識がなくても、「データを送ること」と「機械を動かすこと」という基本を理解しておけば、ニュースで聞く5Gや6G、IoT、AIといった言葉も、ぐっと身近に感じられるはずです。



私たちの生活を便利にし、社会課題を解決するこれらの技術。その進化をぜひ、楽しみながら見守っていきましょう。










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