【真面目版】Wi-Fiに繋ぐだけで身元確認?初心者でもわかるEAP-TLSの仕組みと安全性

目次

はじめに:「パスワードだけ」で本当に安全?

空子/情報セキュリティマネジメント担当

会社や学校のWi-Fiに接続するとき、IDとパスワードを入力した経験はありませんか? 多くの人にとって、ネットワークに接続する認証といえば「パスワードを入れること」でしょう。

しかし、パスワードには弱点があります。盗み見られるかもしれない。推測されるかもしれない。フィッシング詐欺で騙し取られるかもしれない。もし企業や病院、政府機関など、高いセキュリティが求められる場所で、パスワードひとつ漏れただけでネットワークに侵入されてしまったら。被害は計り知れません。

そこで登場するのが「EAP-TLS」という認証方式です。パスワードの代わりに「電子証明書」を使うことで、非常に高い安全性を実現しています。この記事では、専門知識がなくてもわかるように、EAP-TLSの仕組みと重要性をやさしく解説します。


まずは用語を分解してみよう

空子/情報セキュリティマネジメント担当

「EAP-TLS」という名前は、2つの技術用語が組み合わさっています。一つずつ見ていきましょう。

EAP(Extensible Authentication Protocol) とは、「拡張認証プロトコル」と訳されます。ネットワークに接続しようとする人が「自分は正当な利用者ですよ」と証明するための、いわば「受付カウンターの手続きの枠組み」のようなものです。EAP自体は「枠組み」に過ぎず、実際にどうやって身元を確認するかは、中に入る方式次第です。パスワードで確認する方式もあれば、もっと厳密な方式もあります。

TLS(Transport Layer Security) とは、インターネット上の通信を暗号化して安全にする技術です。ウェブサイトのURLが「https://」で始まっているとき、裏側ではこのTLSが働いています。オンラインショッピングで入力したクレジットカード番号が安全に送られるのも、TLSのおかげです。

つまり、EAP-TLSとは「EAPという認証の枠組みの中で、TLSという強力な暗号化技術を使って身元を確認する方式」ということになります。

空子/情報セキュリティマネジメント担当

わかりやすくいうと、EAP という受付の流れの中で、TLS を使って本人確認する方式です!

パスワード認証との決定的な違い ― 「証明書」とは何か

空子/情報セキュリティマネジメント担当

EAP-TLSの最大の特徴は、パスワードの代わりに「電子証明書(デジタル証明書)」を使うことです。

電子証明書とは、デジタル世界における「身分証明書」のようなものです。現実世界で運転免許証やパスポートが公的機関によって発行されるように、電子証明書は「認証局(CA:Certificate Authority)」という信頼された機関によって発行されます。

この証明書の中には、「この証明書の持ち主は○○さんです」という情報と、その人だけが持つ暗号鍵が含まれています。偽造は極めて困難で、パスワードのように「他人に教える」ことができるようなものではありません。

現実世界にたとえると、こんなイメージです。パスワード認証は「合言葉」で中に入れる仕組みです。合言葉を知っていれば誰でも入れてしまいますし、合言葉を盗み聞きされたらおしまいです。一方、EAP-TLSの証明書認証は「顔写真付きの身分証明書」を見せて入る仕組みです。身分証明書は本人しか持っておらず、偽造も難しいため、はるかに安全です。

EAP-TLSの認証はどう進む?

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EAP-TLSでネットワークに接続するとき、裏側ではどのようなやり取りが行われているのでしょうか。少し簡略化して説明します。

まず登場人物を整理しましょう。「あなたのパソコンやスマホ(クライアント)」「Wi-Fiアクセスポイント(中継役)」「認証サーバー(門番)」の3者が関わります。

最初に、あなたのデバイスがWi-Fiアクセスポイントに接続を要求します。アクセスポイントは自分では判断せず、認証サーバーに「この人を確認してください」と取り次ぎます。

次に、認証サーバーがあなたのデバイスに自分の証明書を提示します。「私は正規の認証サーバーですよ」という身元証明です。あなたのデバイスはこの証明書を検証し、相手が本物のサーバーであることを確認します。

続いて、今度はあなたのデバイスが自分の証明書を認証サーバーに提示します。「私は正規のユーザーですよ」という身元証明です。認証サーバーはこの証明書を検証し、あなたが正当な利用者であることを確認します。

ここが重要なポイントです。EAP-TLSでは双方向認証が行われます。サーバーがクライアントを確認するだけでなく、クライアントもサーバーを確認するのです。つまり、偽のWi-Fiアクセスポイントに騙されて接続してしまうリスクも防げます。

すべての検証が成功すると、両者の間で安全な暗号化通信が確立され、晴れてネットワークへの接続が許可されます。このやり取り全体は一瞬で行われるため、利用者はほとんど意識することがありません。

なぜEAP-TLSは安全なのか

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EAP-TLSが高い安全性を誇る理由は、いくつかあります。

第一に、パスワードがネットワーク上を流れないことです。パスワード方式の場合、どんなに暗号化されていても、パスワード情報が通信経路のどこかを通過します。EAP-TLSでは証明書と暗号鍵を使った数学的な検証だけで認証が完了するため、盗聴されても秘密情報が漏れる心配がありません。

第二に、フィッシング攻撃に強いことです。パスワードは偽サイトに入力してしまえば盗まれますが、証明書による認証は人間が手動で行うものではないため、偽の認証サーバーに証明書の秘密情報を渡してしまうということがありません。

第三に、先ほど述べた双方向認証です。あなたのデバイスもサーバーの正当性を確認するため、悪意のある第三者が偽のWi-Fiスポットを設置してもすぐに見破れます。カフェや空港で見かける「なりすましWi-Fi」の被害を防ぐうえでも有効です。

第四に、証明書は一つひとつ個別に管理・失効させることができます。たとえば社員が退職したら、その人の証明書だけを無効にすれば即座にアクセスを遮断できます。パスワードの場合、共有パスワードを変更すると他の全員にも影響が出てしまいますが、証明書なら個別対応が可能です。

EAP-TLSが使われている場所

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EAP-TLSは主に、高いセキュリティが求められる環境で採用されています。

企業のオフィスネットワークでは、社内Wi-Fiへの接続にEAP-TLSを導入しているケースが多くあります。社員の端末にあらかじめ証明書をインストールしておくことで、許可された端末だけがネットワークに参加できるようにしています。

医療機関では、患者の個人情報を扱うため、ネットワークへのアクセス管理が非常に厳格です。EAP-TLSを導入することで、認可された医療スタッフの端末からのみ電子カルテシステムにアクセスできるようにしています。

政府機関や金融機関など、機密性の高い情報を扱う組織でも広く採用されています。一般の方が直接EAP-TLSを意識する機会は少ないかもしれませんが、社会の重要なインフラの裏側で、この技術が日々セキュリティを支えているのです。

大学のキャンパスネットワーク「eduroam(エデュローム)」でも、EAP-TLS(またはその関連方式)が使われており、学生や研究者が世界中の参加機関で安全にWi-Fiを利用できる仕組みを提供しています。

EAP-TLSのデメリットと課題

空子/情報セキュリティマネジメント担当

もちろん、EAP-TLSにもデメリットはあります。

最大の課題は、導入と運用の手間です。すべてのユーザーの端末に個別の証明書をインストールする必要があり、証明書の発行・更新・失効を管理する「認証局」も運用しなければなりません。数人規模の会社なら大した手間ではありませんが、数千人、数万人の組織となると、その管理コストは無視できません。

また、新しい端末を追加するたびに証明書のインストール作業が必要です。スマートフォンやタブレット、ノートパソコンなど、一人が複数のデバイスを持つ現代では、端末ごとの証明書管理がさらに複雑になります。

証明書の有効期限が切れると接続できなくなるため、期限管理を怠ると「突然ネットワークに繋がらなくなった」というトラブルも起こりえます。

こうした運用面のハードルがあるため、セキュリティ要件がそこまで厳しくない環境では、パスワードを使うEAP-PEAPやEAP-TTLSといった、もう少し手軽な方式が選ばれることもあります。ただし、これらの方式はEAP-TLSほどの安全性は持ち合わせていません。

おわりに:「見えない入口」こそ、しっかり守る

私たちは毎日、Wi-Fiに接続してインターネットを利用しています。その「接続する瞬間」は、ネットワークという建物に入るための「入口」です。この入口をどれだけ厳格に守るかが、その先にあるすべての情報の安全性を左右します。

EAP-TLSは、パスワードに頼らず、電子証明書という強力な「身分証明書」によって入口を守る仕組みです。導入には手間がかかりますが、その分、パスワード漏洩やフィッシング攻撃、なりすましWi-Fiといった脅威に対して、非常に高い耐性を発揮します。

空子/情報セキュリティマネジメント担当

普段意識することのない認証技術ですが、「自分のスマホがWi-Fiに繋がるまでの間にどんなやり取りが行われているのか」を少しでも知っておくことは、デジタル社会を安全に生きるうえでの大きな武器になるはずです。

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この記事を書いた人

ITTIのアバター ITTI 運営長

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調べものと学ぶことが止められなくなり、現在は以下の4ブログを運営中:
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目標資格:情報処理安全確保支援士(学ぶこと多すぎて道のりは遠いですが、毎日コツコツ進めています…泣)

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