はじめに
空子/情報セキュリティマネジメント担当パソコンやスマートフォンを使っていると、「このソフト、無料で使えるけど本当に大丈夫?」と不安に思ったことはありませんか? 世の中には様々な形で配布されているソフトウェアがありますが、その中でも特に自由度が高いのが「パブリックドメインソフトウェア」です。
この記事では、パブリックドメインソフトウェアとは何か、どんな特徴があるのか、そしてどんな場面で役立つのかを、できるだけわかりやすくお伝えします。
そもそも「パブリックドメイン」ってなに?





「パブリックドメイン」とは、日本語に訳すと「公有」という意味です。もともとは著作権の世界で使われる言葉で、著作権が消滅した作品や、作者が自ら著作権を放棄した作品のことを指します。
たとえば、夏目漱石の小説や、ベートーヴェンの楽曲は、著作権の保護期間が過ぎているため、誰でも自由にコピーしたり、改変したり、販売したりすることができます。
ソフトウェアの世界でもこれと同じ考え方があります。開発者が「このソフトウェアの著作権を主張しません。誰でも自由に使ってください」と宣言したソフトウェアが、パブリックドメインソフトウェアです。
パブリックドメインソフトウェアの特徴



パブリックドメインソフトウェアには、いくつかの大きな特徴があります。
まず、完全に自由に使えるという点です。個人利用はもちろん、会社の業務で使っても、学校の授業で使っても、まったく問題ありません。利用にあたって許可を取る必要もなければ、料金を支払う必要もありません。
次に、改変や再配布も自由だという点です。パブリックドメインソフトウェアは、ソースコード(プログラムの設計図のようなもの)を自由に書き換えることができます。自分好みにカスタマイズしたり、改良版を作って友人に渡したり、インターネット上で公開したりすることも自由です。さらに、改変した作品を有料で販売することすら許されています。
そして、著作権表示の義務がないという点も重要です。後述する「フリーソフトウェア」や「オープンソースソフトウェア」の中には、「使うときは必ず作者名を表示してください」というルールがあるものもあります。しかし、パブリックドメインソフトウェアにはそのような義務がありません。
フリーソフトやオープンソースとの違い





ここで「フリーソフトウェアやオープンソースソフトウェアとは何が違うの?」と思った方もいるかもしれません。実はこれらは似ているようで、細かい部分が異なります。
フリーソフトウェアとは、「無料で使えるソフト」という意味で使われることが多い言葉です。ただし、フリーソフトの中には「個人利用は無料だけど、商用利用は有料」といった条件がついているものも少なくありません。また、ソースコードが公開されていない場合も多く、改変ができないこともあります。
オープンソースソフトウェアは、ソースコードが公開されていて、誰でも改変や再配布ができるソフトウェアです。しかし、多くのオープンソースソフトウェアには「ライセンス」と呼ばれる利用条件が設定されています。たとえば有名なGPLライセンスでは、「改変したソフトを配布する場合は、そのソースコードも公開しなければならない」というルールがあります。MITライセンスやBSDライセンスはもう少し緩やかですが、「著作権表示を残すこと」という条件はあります。
一方、パブリックドメインソフトウェアにはこのような条件が一切ありません。まさに「何でも自由」なのです。自由度という点では、あらゆるソフトウェアの中で最も制約が少ないと言えるでしょう。
パブリックドメインソフトウェアの具体例



では、実際にどんなパブリックドメインソフトウェアがあるのでしょうか。いくつか代表的なものを紹介します。
SQLiteは、世界で最も広く使われているデータベースエンジンの一つです。スマートフォンのアプリやウェブブラウザの内部など、私たちが気づかないところで膨大な数の製品に組み込まれています。このSQLiteはパブリックドメインとして公開されており、誰でも自由に利用できます。
また、画像圧縮に使われるlibjpegや、暗号化技術の基盤となったリファレンス実装など、インターネットや日常のテクノロジーを支えるソフトウェアの中にもパブリックドメインのものがあります。
日本では、テキストエディタやファイル管理ツールなど、個人の開発者がパブリックドメインとして公開している便利なツールも数多く存在します。
注意しておきたいポイント





パブリックドメインソフトウェアは非常に自由度が高い一方で、いくつか気をつけるべき点もあります。
一つ目は、サポートや保証がないことです。パブリックドメインソフトウェアは、基本的に「現状のまま」提供されます。バグがあっても修正してもらえる保証はありませんし、使用中に問題が起きても開発者に責任を問うことはできません。自己責任で使うという意識が大切です。
二つ目は、法的な曖昧さです。実は日本の著作権法では、著作権を完全に「放棄」できるかどうかについて明確な規定がありません。このため、開発者が「パブリックドメインです」と宣言していても、法律的に完全に著作権が消滅しているかどうかは議論の余地があります。こうした問題を解決するために、CC0(クリエイティブ・コモンズ・ゼロ)やUnlicenseといった、法的により明確な形でパブリックドメイン相当の権利放棄を表明する仕組みも生まれています。
三つ目は、出所の確認です。「パブリックドメイン」と称して配布されているソフトウェアの中に、実際には他人の著作物が無断で含まれているケースもゼロではありません。信頼できるサイトやリポジトリからダウンロードすることを心がけましょう。
まとめ
パブリックドメインソフトウェアは、著作権による制約を受けずに、誰でも自由に使い、改変し、配布できるソフトウェアです。フリーソフトやオープンソースソフトウェアよりもさらに自由度が高く、個人利用から商用利用まで幅広く活用できます。



ただし、保証やサポートがないこと、日本の法律上の曖昧さがあることなど、注意点も理解した上で活用することが大切です。ソフトウェアを選ぶ際に「このソフトのライセンスはどうなっているんだろう?」と少し意識してみるだけでも、より安心してデジタルライフを楽しめるようになるはずです。










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