まず知っておきたい「記憶の階層」
幽灯子/基本情報技術者副専門官コンピュータの記憶装置には「速いけど容量が小さい」ものから「遅いけど大容量」のものまであり、ピラミッドのような階層構造になっています。上に行くほど高速・高価・小容量、下に行くほど低速・安価・大容量です。
▲ 速い・高価・小容量
/ \
/ レ \ ← レジスタ
/ ジ ス \
/ タ \
/──────────\
/ キャッシュ \ ← キャッシュメモリ
/ メモリ \
/────────────────\
| 主記憶装置 | ← メインメモリ(RAM)
| (メインメモリ)|
|────────────────|
| 補助記憶装置 | ← HDD, SSD, USBメモリなど
|────────────────|
▼ 遅い・安価・大容量
たとえるなら、こんなイメージです。
- レジスタ → あなたの「手」。今まさに作業している紙を持っている
- キャッシュメモリ → 「机の上」。すぐ手が届く範囲に置いてある資料
- 主記憶装置(RAM) → 「引き出し」。作業中によく使うものをしまっておく場所
- 補助記憶装置 → 「本棚や倉庫」。たくさん保管できるが、取りに行くのに時間がかかる
1. レジスタ(Register)



ひとことで言うと、CPU(頭脳)の中にある、最速・最小の記憶場所。
レジスタはCPUが計算をするときに、一時的にデータを置いておく場所です。容量は数十〜数百バイト程度しかありませんが、CPUと一体なので読み書きが圧倒的に速いのが特徴です。
💡 試験ポイント: レジスタには用途別の種類があります。
- プログラムカウンタ(PC):次に実行する命令の場所を覚えておく
- 命令レジスタ(IR):今実行している命令そのものを保持する
- アキュムレータ:演算結果を一時的に保持する
- ベースレジスタ/インデックスレジスタ:メモリのアドレス計算に使う
2. キャッシュメモリ(Cache Memory)



ひとことで言うと、CPUとメインメモリの間に入る「取り次ぎ役」。よく使うデータを先読みして高速化。
CPUはとても速いのに、メインメモリはそこまで速くありません。この速度差を埋めるために、よく使うデータのコピーを高速なキャッシュメモリに置いておきます。
身近な例で言えば、図書館(メインメモリ)から何度も借りる本を、自分の机の上(キャッシュ)に置いておくようなものです。
💡 試験ポイント
- ヒット率:キャッシュにデータがあった割合。ヒット率が高いほど高速に動作します。
- L1キャッシュ、L2キャッシュ:キャッシュにも階層があり、L1が最速・最小、L2はやや遅いが大きい。
- SRAM(スタティックRAM) という高速なメモリが使われています。
3. 主記憶装置(メインメモリ/RAM)





ひとことで言うと、パソコンが「今まさに作業中」のデータを置く場所。電源を切ると消えてしまう。
皆さんがパソコンのスペックで見る「メモリ 8GB」「メモリ 16GB」がこれです。アプリを起動したり、ファイルを開いたりすると、補助記憶装置からデータが主記憶に読み込まれ、CPUが処理します。
💡 試験ポイント
- RAM(Random Access Memory):どのアドレスでも同じ速度でアクセスできる。
- DRAM(ダイナミックRAM):メインメモリに使われる。定期的にデータを書き直す「リフレッシュ」が必要。安価で大容量。
- SRAM(スタティックRAM):キャッシュメモリに使われる。リフレッシュ不要で高速だが、高価で小容量。
- 揮発性メモリ:電源を切るとデータが消える。RAMはこれに該当します。
DRAMとSRAMの比較
| 項目 | DRAM | SRAM |
|---|---|---|
| 速度 | やや遅い | 速い |
| 価格 | 安い | 高い |
| 容量 | 大きい | 小さい |
| リフレッシュ | 必要 | 不要 |
| 主な用途 | メインメモリ | キャッシュメモリ |
4. ROM(Read Only Memory)



ひとことで言うと、基本的に「読み出し専用」のメモリ。電源を切ってもデータが残る。
ROMは不揮発性メモリで、コンピュータを起動するための基本プログラム(BIOS/UEFIなど)を保存するのに使われます。
💡 試験ポイント:ROMの種類
- マスクROM:工場で一度だけ書き込む。書き換え不可。
- PROM:ユーザが1回だけ書き込める。
- EPROM:紫外線を当てて消去し、書き換えられる。
- EEPROM:電気的に消去・書き換えができる。
- フラッシュメモリ:EEPROMの発展形。USBメモリやSSDの中身はこれです。
5. 補助記憶装置(外部記憶装置)





主記憶装置(RAM)は電源を切ると消えてしまうので、データを永続的に保存するために補助記憶装置が必要です。
5-1. HDD(ハードディスクドライブ)
回転する金属の円盤(ディスク)に、磁気でデータを記録する装置です。大容量で安価ですが、物理的に円盤を回してデータを読み書きするため、SSDと比べるとアクセスが遅いです。
💡 試験ポイント
- セクタ:データ記録の最小単位
- トラック:ディスク上の同心円状の領域
- シリンダ:複数のディスクの同じ位置にあるトラックをまとめた概念
- シーク時間:読み書きヘッドが目的のトラックまで移動する時間
- 回転待ち時間:目的のセクタがヘッドの下に来るまでの待ち時間
- アクセス時間 = シーク時間 + 回転待ち時間 + データ転送時間
5-2. SSD(ソリッドステートドライブ)
フラッシュメモリを使った記憶装置で、HDDのような物理的な回転部品がありません。そのためアクセスが非常に高速で、衝撃にも強いのが特徴です。ただし、HDDに比べると容量あたりの価格がやや高めです。
5-3. 光ディスク(CD / DVD / Blu-ray)
レーザー光を使ってデータを読み書きする記憶媒体です。
| 種類 | 容量の目安 | 特徴 |
|---|---|---|
| CD-ROM | 約700MB | 読み取り専用。音楽CDなど |
| CD-R | 約700MB | 1回だけ書き込み可能 |
| CD-RW | 約700MB | 何度でも書き換え可能 |
| DVD | 約4.7GB | CDより大容量。映画などに利用 |
| Blu-ray | 約25GB〜 | DVDよりさらに大容量。高画質映像向け |
5-4. USBメモリ/SDカード
フラッシュメモリを使った小型の記憶装置です。持ち運びしやすく、パソコンやスマートフォンのデータの受け渡しによく使われます。
5-5. 磁気テープ
大量のデータを長期間保管するのに使われるテープ状の記憶媒体です。アクセスは遅い(先頭から順番に読む必要がある)ものの、非常に安価で大容量なため、企業のバックアップ用途で現在も使われています。
💡 試験ポイント: 磁気テープはシーケンシャルアクセス(順次アクセス)の代表例です。一方、HDDやSSDはランダムアクセス(どの場所にも直接アクセスできる)です。
6. RAID(レイド)— 複数のディスクを組み合わせる技術



RAIDは複数のHDDやSSDを組み合わせて、速度や信頼性を高める技術です。
| レベル | 仕組み | メリット |
|---|---|---|
| RAID 0(ストライピング) | データを複数のディスクに分散して書き込む | 読み書きが高速になる(ただし1台壊れると全データ消失) |
| RAID 1(ミラーリング) | 同じデータを2台のディスクに書き込む | 1台が壊れてもデータが残る(容量は半分になる) |
| RAID 5 | データとパリティ(復元用情報)を分散配置 | 1台壊れても復元可能。容量効率もまずまず |
7. 覚えておきたいキーワード集


アクセス方式
- ランダムアクセス:目的のデータに直接アクセスできる(例:RAM、HDD、SSD)
- シーケンシャルアクセス:先頭から順番にたどる必要がある(例:磁気テープ)
揮発性と不揮発性
- 揮発性メモリ:電源OFFでデータが消える(例:DRAM、SRAM)
- 不揮発性メモリ:電源OFFでもデータが残る(例:ROM、フラッシュメモリ、HDD、SSD)
実効アクセス時間の計算
試験では「キャッシュのヒット率」を使った計算問題がよく出ます。
実効アクセス時間 = ヒット率 × キャッシュアクセス時間
+ (1 − ヒット率)× 主記憶アクセス時間
例題: キャッシュのアクセス時間が10ナノ秒、主記憶のアクセス時間が80ナノ秒、ヒット率が90%のとき
実効アクセス時間 = 0.9 × 10 + 0.1 × 80 = 9 + 8 = 17ナノ秒
キャッシュがなければ毎回80ナノ秒かかるところが、17ナノ秒まで短縮されます。キャッシュの効果は絶大ですね。
まとめ — 記憶装置の全体像
| 記憶装置 | 速度 | 容量 | 揮発性 | 身近なたとえ |
|---|---|---|---|---|
| レジスタ | ★★★★★ | 極小 | 揮発 | 手に持った紙 |
| キャッシュ(SRAM) | ★★★★☆ | 小 | 揮発 | 机の上の資料 |
| メインメモリ(DRAM) | ★★★☆☆ | 中 | 揮発 | 引き出し |
| SSD | ★★☆☆☆ | 大 | 不揮発 | 整理棚 |
| HDD | ★☆☆☆☆ | 大 | 不揮発 | 倉庫 |
| 光ディスク | ★☆☆☆☆ | 中 | 不揮発 | アルバム |
| 磁気テープ | ☆☆☆☆☆ | 極大 | 不揮発 | 書庫の奥の保管庫 |



記憶装置は種類が多くて混乱しがちですが、「速さ・容量・揮発性」の3つの視点で整理すると、すっきり理解できます。試験対策では特に、DRAMとSRAMの違い、キャッシュのヒット率計算、RAIDの各レベル、HDDのアクセス時間の計算がよく問われますので、重点的に押さえておきましょう。













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