基本情報技術者に出るCSR調達とは？企業が今すぐ取り組むべき

はじめに

企業の社会的責任（CSR）がますます重視される中、サプライチェーン全体における倫理的・環境的な配慮が求められています。その中核を担うのが「CSR調達（持続可能な調達）」です。

CSR調達とは？その定義と重要性

CSR調達とは、企業が製品やサービスを調達する際に、価格や品質だけでなく、環境保護、人権尊重、公正な労働慣行、倫理的な取引など、社会的責任を考慮した調達活動のことを指します。

単なる「コスト削減」や「効率化」ではなく、企業の持続可能性を高め、ステークホルダーからの信頼を得るための戦略的な取り組みとして、グローバルに注目されています。

なぜ今、CSR調達が注目されているのか？

2020年代に入り、世界中でサプライチェーンにおける人権侵害や環境破壊が深刻な問題として取り上げられるようになり、各国で法規制の強化が進んでいます。特に2025年現在、日本企業もその影響を強く受けています。

例えば、EUでは森林破壊防止規則（EUDR）や企業サステナビリティ・デューデリジェンス指令（CSDDD）が導入され、域外企業であっても規制の対象となるケースが増えています。さらに日本国内でも「持続可能な調達ガイドライン」や「サステナビリティ情報開示基準（SSBJ S1/S2）」が整備され、企業は調達活動において環境や人権への配慮を明確に示すことが求められています。

加えて、投資家や消費者の間ではESG評価や企業の透明性に対する期待が高まり、CSR調達は単なる社会的貢献ではなく、企業の競争力を左右する重要な要素となっています。

つまり、CSR調達は「やった方がよい」取り組みから「やらなければならない」必須の経営課題へと進化しているのです。

2025年の最新動向：CSR調達の3つのキーワード

継続的デューデリジェンス（DD）の義務化

CSR調達の中心にあるのは「継続的なデューデリジェンス（DD）」です。

グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパン（GCNJ）の提言によれば、CSR調達は単発の監査で終わるものではなく、サプライヤーとの対話を重ね、評価を行い、改善を促すという循環的なプロセスを継続することが不可欠とされています。つまり、問題が発覚した時点で対応するのではなく、日常的にリスクを把握し、改善を積み重ねる仕組みが求められているのです。これにより、企業はサプライチェーン全体の透明性を高め、長期的な信頼関係を構築することができます。

情報開示と第三者検証の強化

2025年3月には、日本版IFRSに基づくサステナビリティ情報開示基準（SSBJ S1/S2）が公表され、まずは時価総額3兆円以上の大企業から順次義務化が始まります。ここで求められるのは、サプライチェーンにおける人権侵害や環境リスクへの対応状況を具体的に開示することです。さらに、開示情報の信頼性を担保するために第三者による検証が重視されるようになっています。単なる「自己申告」ではなく、外部の視点を取り入れることで、企業の透明性と説明責任が強化され、投資家や消費者からの信頼を獲得することにつながります。

トリプルウィン調達の実現

GCNJが提唱する「トリプルウィン調達」とは、企業・サプライヤー・社会の三者すべてに利益をもたらす調達のあり方です。その実現には、具体的に三つのプロセスが鍵となります。まず、取引先説明会を通じて企業のCSR方針を共有し、サプライヤーに期待される行動基準を明確にします。次に、SAQ（自己評価質問票）を用いてサプライヤー自身に現状を振り返ってもらい、課題を可視化します。そして最後に、第三者による監査とフィードバックを行うことで、客観的な評価を加え、改善の方向性を具体的に示します。これらのプロセスを繰り返すことで、企業はサプライヤーと共に持続可能な成長を目指し、社会全体にプラスの影響を広げることができるのです。

実践のポイント：企業が今すぐ取り組むべきこと

CSR調達を効果的に進めるためには、企業が具体的な行動に移すことが重要です。まず取り組むべきは、CSR調達ガイドラインの策定と公開です。自社の調達方針を明文化し、サプライヤーと共有することで、期待値を明確にし、信頼関係を強化することができます。ガイドラインは単なる宣言ではなく、サプライヤーに対する具体的な行動指針となり、持続可能な調達の基盤を築きます。

次に、セルフアセスメントと評価制度の導入が挙げられます。島津製作所の事例のように、サプライヤーにCSRセルフチェックを求め、点数化やランク付けを行うことで、改善の動機づけが生まれます。さらに、評価結果を透明に示すことで、企業とサプライヤー双方にとって信頼性の高い関係を構築することが可能になります。

また、部署横断型の推進体制の構築も欠かせません。CSR調達は調達部門だけの課題ではなく、開発、営業、法務、さらには経営層を巻き込んだ全社的な取り組みが必要です。タスクフォースを設置し、各部門が連携することで、調達活動全体に一貫性と実効性を持たせることができます。

最後に、「守り」と「攻め」の両立を意識することが重要です。CSR調達はリスク回避（守り）のための仕組みであると同時に、ブランド価値の向上や新市場開拓（攻め）につながる戦略でもあります。製品単位でのサステナビリティ評価や認証取得を進めることで、企業は社会的責任を果たすだけでなく、競争力を高めることができるのです。

今後の展望：CSR調達は経営戦略の中核へ

2030年に向けて、CSR調達は単なるコンプライアンス対応ではなく、企業の競争力そのものを左右する重要な要素へと進化していきます。特に、カーボンニュートラル、サーキュラーエコノミー、ネイチャーポジティブといった領域を統合的に取り込む戦略が不可欠です。